フィリピンの不動産(コンドミニアム)をプレビルドで購入された皆様。「数年前に契約した物件が、そろそろ完成を迎える」そんな時期ではありませんか?
購入当時は「値上がりが楽しみだ」「完成まで数年あるから安心だ」と思っていたものの、いざ完成が近づくと、多くのオーナー様が以下のような不安に直面します。
- 「残金の支払いはいつ、どうやって送金すればいい?」
- 「フィリピンの銀行ローン(PNB等)は本当に通るのか?」
- 「完成後の鍵の受け取りや内装工事は誰がやるの?」
- 「購入時の業者が連絡つかない、または管理はできないと言われた」
フィリピン不動産投資は「買って終わり」ではありません。「完成前後の手続き」こそが、投資の成否を分ける最大の山場です。 ここで躓くと、月利3%ものペナルティ(延滞金)の発生や、最悪の場合は物件の没収という事態にもなりかねません。
そこで今回は、フィリピン不動産販売・管理で10年以上の実績を持つ株式会社API GATEWAYの代表・永田 智睦(ながた ともちか)氏に徹底インタビューを実施。プレビルド物件の完成1年前から、引き渡し(ターンオーバー)、そして賃貸管理・売却に至るまでの「具体的な手続きの全手順」と「現場のリアルな注意点」を完全解説します。
目次
フィリピン不動産完成までのタイムライン
まず、プレビルドで購入した物件が完成するまでの全体像を把握しましょう。フィリピンのデベロッパーは、日本の企業のように「手取り足取り」教えてくれるわけではありません。オーナー自身がスケジュールを把握し、先回りして動く必要があります。
物件完成までの理想的なスケジュール
完成1年前
資金計画の最終確認:残金を「手元の現金」で払うか、「銀行ローン」を利用するかを確定させます。
連絡先の確認:デベロッパーからのメールアドレス変更などがないか確認します。通知が迷惑メールに入っていて気づかなかった、というケースも意外と多いです。
完成6ヶ月〜8ヶ月前
ローン申請開始:PNB(フィリピンナショナルバンク)などの銀行融資を利用する場合は、この時期には申し込みを開始しないと間に合いません。
現金資金の移動準備:定期預金の解約、為替レートの変動チェック、送金銀行への事前相談を行います。
完成3ヶ月前
管理会社の選定:物件引き渡し後の内装工事や客付け(賃貸募集)を依頼する会社を決め、契約を進めます。自分自身で行うことも可能です。
SPA(委任状)の作成:現地に行かずに手続きする場合、認証済みの委任状が必要です。
完成月(Turnover Month)
残金(Turnover Balance)およびクロージングフィー(諸費用)の完済
デベロッパーによる入金確認と証明書発行
完成2〜3ヶ月後
物件の引き渡し(Turnover)が可能になる
インスペクション:施工チェックと修繕
鍵の受け取り(Acceptance)
引き渡し後
インテリアセットアップ(家具家電の搬入)を経て、賃貸募集スタート
【最重要】資金準備を1年前から始めるべき理由
物件が完成する月には、以下の2つの大きな支払いが発生します。
完成月に支払う2つの大きなお金
- 物件価格の残金(Turnover Balance)
プレビルド方式では、完成時に残りの70〜80%を一括で支払うのが一般的です。例えば2,000万円の物件なら、1,400万円〜1,600万円を一括で用意する必要があります。 - クロージングフィー(Closing Fees)
登記費用や税金などの諸費用です。物件やディべロッパーによって異なりますが通常、物件価格の6%〜10.5%程度かかります(2,000万円の物件なら120万円〜200万円)。
これらは必ず完成月に支払う必要があります。
ペナルティの恐怖!月利3%の遅延損害金とは
もし支払いが遅れるとどうなるのでしょうか?フィリピンのデベロッパーは非常にシビアです。
支払いが遅れると、月単位で残金に対して3%〜4%の高額なペナルティ(延滞金)が加算されます。
残金が1,500万円あった場合、月利3%だと1ヶ月で45万円ものペナルティです。
3ヶ月遅れれば135万円以上。これが複利で増えていくこともあります。
さらに一定期間(通常は数ヶ月〜1年程度)滞納が続くと、「Notarial Notice(解約通知)」が届き、最悪の場合は契約解除・既払い金の没収となります。
数年間積み立てた数百万円が一瞬でゼロになることだけは避けなければなりません。
もし支払えなかったらどうなる?「売却」と「マセダ法」
支払いの目処が立たない、あるいは投資方針が変わった場合、どのような選択肢があるのでしょうか。
「売却(転売)」で逃げ切ることは可能か?
完成直前に「支払えないから売りたい」という転売(フリップ)相談も多いですが、現状、名義変更の手数料高騰や買い手不足により、利益を出す売り抜けは極めて困難です。
買い手がつぎづらい:残金支払いが迫っている物件を、現状の相場価格(値上がり後の価格)でキャッシュで購入してくれる買い手を見つけるのは容易ではありません。投資目的の方は、完成目前の物件より既に完成している物件プレビルド物件を好む傾向にあります。
最悪の場合、損切り(投げ売り)でも買い手が見つからないリスクがあるため、「売れなかったら残金が払えない」という自転車操業的な計画は非常に危険です。
マセダ法(Maceda Law)の適用
フィリピンには「マセダ法」という購入者保護の法律があります。一定の条件を満たせば、契約解除時に支払額の50%程度が返金される権利です。全く手元に戻らないよりはマシですが、あくまで「最後の手段」として利用しましょう。
フィリピン不動産の残金を払う3つの方法と注意点
支払い方法は大きく分けて「自己資金(現金)」「銀行融資」「インハウスローン」の3つがあります。
① 自己資金(現金)で支払う場合
「ローンは組まず、手元の現金で払うからギリギリでも大丈夫」と安心している方はいませんか?
ここ最近あった問い合わせの内容として、「現金購入の方こそ、海外送金でつまずき、支払期限に間に合わないトラブルが多発している」という現状があります。
マネーロンダリング対策(AML)による送金審査の厳格化
近年、国際的なマネーロンダリング対策の強化により、日本の銀行からフィリピンへの送金審査は極めて厳しくなっています。以前は数日で送れた金額でも、現在は以下のような厳しいチェックが入ります。
- 「資金の出所(原資)はどこか?」
給与所得、不動産売却益、遺産相続など、原資を証明する通帳のコピーや公的書類の提出が厳格に求められます。「タンス預金」は一切通用しません。 - 「何のための支払いなのか?」
デベロッパーからの請求書(SOA)や売買契約書(CTS)の翻訳提出を求められることもあり、これだけで承認に2〜3週間かかる場合があります。
②日本の銀行を利用する(国内不動産担保)【おすすめ】
日本の銀行を利用して海外不動産投資の資金を調達する方法は、既に日本国内に不動産を所有している方にとってはおすすめの方法です。
- メリット: 金利が安い、手続きが日本語で完結、審査〜実行が早い(最短2ヶ月程度)。
- デメリット: 日本に担保となる不動産が必要。
③フィリピンの銀行を利用する(PNBなど)
日本居住者がフィリピン不動産を購入する際によく利用されるのが、フィリピンナショナルバンク(PNB)です。
フィリピンで購入した物件そのものを担保に融資を受けられるため、日本の不動産を担保に入れる必要がなく、非常に使い勝手の良い選択肢です。
しかし、最大のデメリットは「審査期間の長さ」です。
PNBの融資手続きは、順調にいっても半年(6ヶ月)はかかると思って準備すべきでしょう。
- 必要書類が五月雨式に増える: パスポートだけでなく、就労証明書や経営者であれば3期分の決算書など、担当者によって求められる追加書類が異なります。一つ書類を出すと「次はこれも」と言われるのが日常茶飯事です。
- コミットメント期間(Commitment Period)の罠: 銀行の都合で実行がずれ込めば、その遅延ペナルティはオーナー負担になるリスクがあるのです。
④ インハウスローン(デベロッパー融資)
大手デベロッパー(DMCI Homesなど)は、購入者向けの自社ローンを用意しています。
- メリット: 審査がほぼ不要. 誰でも利用可能。
- デメリット: 金利が高い(10%〜15%前後)、返済期間が短い。
国際送金で失敗しないためには「為替とタイミング」に注意
送金ルートの制約: 特定の送金ルート(Remittance)を使わないと着金しないデベロッパーも増えています。個人がネットバンクから適当に送金するのは非常にリスクが高いです。
レート確定のタイミング: 厳しいタイムリミット(例:15時まで)が存在します。
1日の遅れが命取り: 送金が1日でもズレてレートが変わると、「数千ペソ足りない」という理由だけで入金処理が完了せず、ペナルティが加算されることがあります。
完成後の手続き 引き渡し(Turnover)とSPAの重要性
支払いが終わってから鍵を受け取るまで、通常2〜3ヶ月かかります。ここで必須となるのがSPA(Special Power of Attorney:委任状)です。
信頼できる現地エージェントを代理人に指定することで、日本にいながら以下の業務を全て任せることができます。
- 引き渡し書類へのサイン、鍵の受領
- インスペクション(検査): 壁のひび割れ、水漏れ、建具の建て付け不良、排水の詰まりなどをチェックし、修繕(Rectification)を依頼します。
- 家具家電の搬入・設置立ち会い
- 賃貸募集・契約締結
かつて大手とされていた日系エージェントの撤退や破綻により、管理の引受先を失ったオーナー様からの相談が急増しています。
なぜ、しっかりした管理会社が少ないのか?
- 現地拠点と日本拠点の連携不足: 両方を維持するコストが高く、日本側の窓口が形骸化している会社が多い。
- 賃貸管理のノウハウがない: 「売るだけ」のブローカーが多く、トラブル発生時の修繕や家賃回収ができない。
管理会社選びの失敗は、不動産投資の失敗に直結します。空室が続く、家賃が送金されない、修繕費が不透明…こうしたトラブルを防ぐには、現地に日本人が駐在し、自社で管理部門を持つ会社を選ぶべきです。
意外と知らない「権利書(CCT)」の扱い
完成から1〜2年経つと、物件の権利書(CCT: Condominium Certificate of Title)が発行されます。
この権利書、皆さんはどうしますか?「大事なものだから日本に持ち帰って金庫に入れたい」と思いますよね?
しかし、おすすめは「安易に日本に持ち帰らず、管理会社やデベロッパーの保管サービス(カストディアン)を利用すること」です。
なぜなら、フィリピンでの権利書再発行手続きは「地獄」だからです。
万が一、日本への郵送中に紛失したり、自宅で紛失したりした場合。
再発行するためには、フィリピンで弁護士を雇い、裁判所での申し立てを行い、審理を経て判決をもらう必要があります。
これには最低でも1年以上の期間と、数十万円〜百万円単位の弁護士費用・裁判費用がかかります。
しかも、その間は物件を売却することもできません。
将来、物件を売却するときには必ず権利書の原本が現地で必要になります。その時に「日本にあるから送ります(→紛失リスク)」や「見当たらない(→売却不可)」となるリスクを考えれば、現地で安全に保管してもらうのが最も賢明な選択肢なのです。
まとめ|完成直前でも諦めないでください
- 準備は完成の1年前からスタートすること。
- 送金・ローンは「数年前の常識」より遥かに時間がかかると知ること。
- 出口(売却)を見据えた管理パートナーを今すぐ確保すること。
もし、現在の手続きで壁にぶつかっている方は、諦めて契約解除になる前に、一度API Gatewayにご相談ください。他社で購入された物件であっても、「資金計画の立て直し」からフルサポートが可能です。
「完成通知が来たが何をすべきか」「現在の管理会社に不満がある」「将来の売却シミュレーションを知りたい」といった個別相談を随時受け付けています。お気軽に公式LINEよりお問い合わせください。
ツアーや個別面談などもやっていますので、お気軽にLINEでお問い合わせください。

監修・インタビュー協力

永田 智睦 (ながた ともちか)
API Gateway株式会社 代表取締役
6年間金融機関に勤務後、個人保険代理店を営み法人化。
現在はフィリピン不動産販売会社や独立系FP事務所を中心に3社経営。
金融業界15年、独立して10年の経験を持ち、個人プランニングを約1000名近くの相談を受ける。
なおAPI Gatewayはフィリピン最大手財閥系デベロッパーの正規代理店として6年連続で日本マーケット売上高1位の実績がある。







