野村不動産とフィリピンの大手企業 Federal Land が共同で設立した「FNG(Federal Land NRE Global)」は、注目を集める海外不動産投資先のひとつです。とはいえ、「結局どういったプロジェクトなのか」「投資して大丈夫なのか」と考えている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、FNGの設立背景からフィリピンで展開する具体的なプロジェクト内容、投資先としての魅力とリスクまでを詳しく解説します。野村不動産がなぜフィリピン市場に進出したのか、その意図と将来性を理解することで、投資判断のヒントが得られるでしょう。
目次
FNG(Federal Land NRE Global)とは?

FNG(Federal Land NRE Global Inc.)は、フィリピンの大手デベロッパーであるFederal Land社と、日本の野村不動産が共同出資して2022年3月に設立した合弁会社です。
GTキャピタル(フィリピン有数の財閥グループ)傘下のFederal Land社が66%、野村不動産が34%を出資し、総資本金は約480億フィリピンペソ(約1,100億円)にのぼります。
本社はマニラ首都圏マカティ市のGTタワー内に置かれ、フィリピン国内での不動産開発・分譲・運営を長期的に手掛けるプラットフォーム企業として位置付けられています。
野村不動産とFederal Landの合弁会社設立の背景
野村不動産は中期経営計画において、海外事業への約3,000億円の投資と、海外利益比率を15〜20%へ引き上げる目標を掲げました。中国や東南アジアを中心に、積極的な展開を続けています。
フィリピンでは2017年から、Federal Land社と三越伊勢丹ホールディングスと共同で、マニラの高級複合開発「ザ・シーズンズレジデンス」に参画。日本式の防災・省エネ設備や、おもてなし設計を採用した“JAPAN CONCEPT”が現地でも高く評価されています。
同プロジェクトは、国際不動産賞でフィリピン最優秀賞を受賞しました。この成功をきっかけに、新会社FNGの設立に至りました。
FNGが担うフィリピン不動産市場での役割
FNG(Federal Land NRE Global Inc.)は、野村不動産グループのフィリピン拠点として、現地のニーズに即した事業を担う企業です。
GTキャピタルの広範なネットワークと、Federal Land社の土地資産、野村不動産の開発ノウハウを融合させ、高品質な街づくりを目指しています。
FNGは、マニラとセブの4エリアで合計約250ヘクタールの用地を取得し、今後10年で約2,700億円を投資する計画です。住宅5万戸、オフィス約680万㎡、商業施設約20万㎡の開発が予定されています。
こうしたプロジェクトを通じ、FNGは中間所得層の住環境の向上や雇用創出に貢献し、フィリピンにおける日系不動産ブランドとしての存在感を強めていく方針です。
なぜ今、野村不動産はフィリピンに進出したのか?

野村不動産がフィリピン市場に本格進出した背景には、フィリピン経済と不動産需要の力強い伸び、そして東南アジア市場における日本企業全体の戦略的な動きがあります。
フィリピン市場の経済成長と不動産需要
近年、安定した経済成長と人口ボーナスにより、不動産市場が注目を集めるフィリピン。若年層の多い人口構成と都市化の進行により、住宅や商業施設の需要が拡大しています。
都市部では住宅不足が深刻化しており、中間所得層の増加とあわせて、質の高い住空間へのニーズも高まっています。加えて、政府による外資誘致やインフラ投資の加速が、投資環境の改善につながっています。
こうした背景から、野村不動産はフィリピン市場の成長性に着目し、将来性ある不動産開発の機会を見据えて進出を決断しました。
東南アジアにおける日本企業の位置づけ
野村不動産のフィリピン進出は、日本の大手不動産企業が東南アジアへ展開を加速させる流れと一致しています。三井不動産や住友林業などもタイやベトナムで事業を展開し、フィリピンでは三越伊勢丹や双日が既に事業参入しています。
日本企業は高品質や信頼性に定評があり、現地での共同事業者として歓迎される傾向があります。野村不動産も中期計画で東南アジアを重点市場と位置づけ、FNGを通じて本格的に参入しました。
FNGの設立により、野村不動産はフィリピンで初の日本系タウンシップ開発を担う存在となり、他社との差別化にもつながっています。同社は高品質な日本式住宅を軸に、現地市場でのブランド確立を目指しています。
FNGが展開する初期プロジェクトの概要
FNGは設立と同時に、マニラやセブなど国内4地域で複合開発プロジェクトを展開する方針を示しました。
すべての計画に日本式の高品質な設計「JAPAN CONCEPT」を採用し、現地の暮らしに新たな価値を提供することを目指しています。
4つの主要都市での開発計画
FNGは、フィリピン国内の4地域で大規模な初期開発プロジェクトを計画しています。
- マンダルヨン
- メトロパーク
- カビテ
- セブ
マニラ中心部のマンダルヨンでは、住宅・商業・オフィスを含む複合開発「The Observatory」を始動。湾岸エリアのメトロパークでは、急成長するベイエリアへの参入を進めています。
マニラ近郊のカビテ州では、600ヘクタール規模・30年計画のタウンシップ事業を展開中です。さらにセブ市周辺では、ITと観光で発展する地方都市への展開を進めています。
これら4地域での開発総面積は約250ヘクタール、総事業費は約7,500億円規模とされ、順次着工予定です。
プロジェクトに共通する「JAPAN CONCEPT」とは
FNGの各開発には「JAPAN CONCEPT」という共通テーマが掲げられています。これは、日本のライフスタイルや技術を取り入れた付加価値の高い不動産づくりを意味します。具体的には以下のような要素が含まれます。
- 高品質な建築と耐久性
- 日本的な快適性と空間設計
- 居住者目線の共用サービス
- 景観・環境への配慮
FNGの物件には、日本の耐震技術や防災対策を反映した安心設計が取り入れられています。収納や動線、水回りなども日本式の工夫が随所に見られます。
共用施設には、仕事や趣味に使えるスペースを整備予定で、若い世代にも配慮された設計です。さらに、広大な緑地の整備や省エネ設備の導入も計画されており、環境面にも配慮しています。
FNGは、こうした日本の品質と暮らしやすさを融合させた「JAPAN CONCEPT」で、現地に新しい住まいの価値を提案しています。
注目プロジェクト
初期プロジェクトの中でも特に注目すべきものが、カビテ州の大規模タウンシップ開発とマニラ都心のSORA Towerです。それぞれの概要と進捗、地域への影響を解説します。
①THE SEASONS Residence(ザ シーズンズ レジデンス)

ザ・シーズンズレジデンスは、フィリピン・マニラ首都圏のボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)に位置する全4棟構成の高級大規模コンドミニアムです 。
日本の野村不動産と三越伊勢丹ホールディングスがフィリピン大手デベロッパーのFederal Land社と共同開発を手掛けており、地下1階から地上3階まではフィリピン初進出となる三越デパートメントストア「MITSUKOSHI」と直結しています 。洗練された都市BGCの新街区「グランド・セントラルパーク」内に位置し、グランドハイアットホテルや商業施設と空中歩道で直結する利便性の高いロケーションにあります 。
立地・設備・ターゲット層
本プロジェクトは、日本の美意識と先進技術を取り入れた点が大きな魅力です。
基本設計・デザイン監修は六本木ヒルズや東京ミッドタウンを手掛けた日建設計が担当しており、日本の最新耐震技術が導入されています 。建物各棟に制震ダンパーを備え、地震や台風が多いフィリピンにおいても安心できる安全性を実現しています 。また、“JAPAN CONCEPT”を掲げた日本らしいコンセプト設計で、共用エリアは和のテイストを取り入れた空間となっています 。

②THE OBSERVATORY(ザ オブザバートリー)SORA Tower(ソラタワー)

SORA Tower(ソラタワー)は、マニラ首都圏マンダルヨン市で進行中の複合開発「The Observatory」の第一号棟となる高層住宅です。
全体計画では約4.5ヘクタールの敷地に、48階建て前後の住宅棟8棟、オフィス棟1棟、商業施設を備えた大規模プロジェクトが構想されており、SORA Towerはその第一期分譲棟として位置づけられています。
立地・設備・ターゲット層
SORA Towerは、マニラ首都圏マンダルヨン市で開発中の高級コンドミニアムで、地上約48階建・全650戸を予定しています。
敷地南側の住戸からはパシグ川越しにBGCを望む眺望が魅力で、共用施設にはコワーキングスペースやカラオケルーム、ジム、プール、日本式のスパ施設などが整備される計画です。
住戸プランは28㎡のスタジオから最大148㎡の3ベッドルームまで幅広く、全体の85%は単身者を想定したスタジオ〜1ベッドルームで構成されています。日本の住宅設計を活かした収納や水回りの機能性も特徴で、限られた空間でも快適に暮らせる工夫が盛り込まれています。
販売スケジュールと購入方法
SORAタワーは、都心勤務の若年層や新興富裕層を主なターゲットに、2023年から現地販売が開始されました。FNGは日本式の品質や設計で差別化を図っており、日本人を含む海外購入希望者には野村不動産が日本語対応でサポートを提供しています。
購入はプレビルド方式で進められ、竣工は2030年頃の予定です。日本国内でも資料請求や相談が可能で、海外投資に不慣れな購入者にも配慮された体制が整っています。
完成後は賃貸や売却も視野に入れられ、BGCに隣接する立地から将来性の高い投資対象と考えられます。

FNG物件は日本人に向いている?居住・投資の観点から検証

ここでは、FNG物件に日本人が実際に住む場合の暮らしやすさと、投資物件として購入する場合のメリット・注意点について解説します。
日本人が住みやすい理由と現地サポート体制
FNGの物件は、日本人の生活様式に合わせた設計・サービスを備え、温水洗浄便座や浴室乾燥機、充実した収納など、日本の住まいと同様の快適性が期待できます。24時間警備や災害対策など、安全面でも安心できる環境が整えられています。
また、日本語によるサポート体制も特徴で、購入・賃貸手続きからアフターサービスまで、日本人スタッフによる対応が可能です。今後は日本食デリバリーやコンシェルジュの導入も検討されており、文化や言語の壁を感じにくい環境づくりが進められています。
マニラは気候や食文化、医療面でも日本人にとって親和性が高く、FNGの物件は「日本クオリティ」と「日本人向けサポート」の両面で、海外生活に不安がある人にも適した選択肢と言えるでしょう。
税制・収益面での注意点
日本人がFNG物件を投資目的で購入する際は、税制や所有制限、為替リスクなど複数の注意点があります。フィリピンの賃貸収入には25〜35%の課税があり、売却益にも約6%の譲渡税がかかります。これに加え、日本での申告時には外国税額控除などの手続きも必要です。
利回りは高い傾向にありますが、管理費や為替変動、ローン金利などの影響を考慮する必要があります。信頼できる管理会社の選定や資金計画を含め、慎重な判断が求められます。
フィリピン不動産の魅力と投資リスク

フィリピン不動産市場全体の魅力と、投資を行う上で知っておきたいリスク・留意点を整理します。成長市場とはいえ国外投資には特有の利点とリスクが存在するため、事前に理解しておきましょう。
高利回り・人口増加などのメリット
フィリピン不動産投資の魅力は、高い経済成長と利回りの良さにあります。若い人口構成と都市部の住宅不足により、住宅価格と家賃は上昇傾向が続いています。
また、物件の小修繕を借主が負担する慣習があり、運営コストが低く抑えられるのも特徴です。若年層の所得向上や住宅ローンの普及により、中間層の住宅購入が増えており、FNGもこの層を主要ターゲットとしています。海外在住のフィリピン人からの送金も需要を支えています。
さらに地下鉄や高速道路などインフラ整備が進んでおり、不動産価値の上昇が見込まれる点でも、フィリピン市場は日本人投資家にとって有望な投資先です。
注意すべき法制度や外国人購入制限
一方、フィリピンで不動産投資をする際には、日本と異なる法制度やルールを理解しておく必要があります。以下に主な注意点をまとめました。
土地の所有は原則不可
フィリピンでは外国人が土地を直接所有することは認められていません。戸建て用地の取得には、現地に60%以上フィリピン人出資の法人を設立するか、フィリピン人配偶者の名義で購入する必要があります。
コンドミニアムは購入可能
外国人でも区分所有マンション(コンドミニアム)は購入できます。ただし、物件全体に占める外国人所有の割合は40%以内と制限されており、人気物件では外国人枠が埋まっていることもあります。
登記と権利証の違いに注意
コンドミニアムには「CCT(区分所有証明)」が発行されます。土地付き物件には「TCT(所有権証書)」が発行されますが、外国人が取得できるのはCCTのみです。登記には納税者番号(TIN)の取得や税金納付が必要で、手続きには数か月かかる場合もあります。
購入時・保有時の税金と費用
物件購入時には、売買税や登記費用などとして物件価格の約4〜6%の諸費用が発生します。保有中は、毎年評価額の1〜2%の固定資産税が必要です。賃貸収入がある場合は、別途所得税の申告も必要です。
賃貸運用には事業許可が必要
不動産を賃貸運用する場合、所在する市からMayor’s Permit(事業許可)の取得が義務付けられています。無許可での運用には罰則があるため、現地の信頼できる管理会社を通じて合法的に運営することが重要です。
まとめ

FNGは、野村不動産とFederal Land社の合弁によって誕生した、新時代の不動産デベロッパーです。フィリピン経済の成長と若い人口による不動産需要拡大を背景に、大型開発に乗り出しています。
フィリピンでの投資物件選びに失敗したくない方は、現地の情報を集め、信頼できる不動産業者を見つけることが重要です。弊社ではツアーや個別面談なども行っていますので、お気軽にLINEにてお問い合わせください。
