旅行や留学先、移住先として人気のフィリピン。首都マニラやリゾート地として知られるセブが有名ですが、治安が気になっている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、最新のフィリピンの治安や外務省が発表する治安情報を解説します。トラブルを避けるための注意点も紹介するので、フィリピンへの渡航を安全に楽しみたい人は最後までお読みください。
目次
現在フィリピンの治安は改善されている
フィリピンの治安は年々改善されており、十数年前と比べるとかなりよくなってきました。かつては麻薬といった悪いイメージが先行していましたが、2016年以降麻薬使用者の取締りが強化されたことが治安の改善に繋がったとも考えられています。
しかし、日本と比較するとどうしても治安の悪さが目立ってしまうのも事実です。具体的には、スリや置き引き、ぼったくり、詐欺、ドラッグなどの危険性があります。
危険な目に遭わないめに、トラブル対策をしっかりと行いましょう。
外務省が発表する治安情報

外務省がホームページには、地域ごとに危険度を示すマップが掲載されています。
レベル1
十分注意してください。
レベル2
不要不急の渡航は止めてください。
レベル3
渡航は止めてください。(渡航中止勧告)
レベル4
退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)※該当地域なし
黄色からオレンジにかけてだんだんと危険度が増しており、旅行先として有名なマニラやセブはもっとも危険度の低い黄色、危険地域とされるミンダナオ地域はもっとも危険度の高いオレンジに色付いています。
出典・参考:外務省海外安全ホームページ
地域別の治安事情
フィリピンでよく知られる地域ごとの治安事情を詳しく見ていきましょう。
フィリピンの首都マニラ
フィリピンの首都マニラは、外務省のマップを見るとレベル1ですが、人口が密集していることから犯罪自体の割合は高い地域と言えます。特に、マニラの中でもマラテやギアボ、エドサは繁華街があり、トラブルが起こりやすい地域です。
とは言え、マニラはフィリピンに住む日本人がもっとも多い地域で、比較的治安の良いエリアもあります。マニラの中でもエリアによって治安に差が出るため、治安の悪いエリアを避けることが重要です。
マニラの治安状況(2025年)
2025年1月~2月
フィリピン国家警察(PNP)の報告によれば、メトロ・マニラ地域での「フォーカス・クライム(殺人、強盗、暴行、強姦などの重大犯罪)」は前年同期比で 21.71%減少 しました。特に殺人は50%、強姦は41.57%、暴行は38%の減少が見られました。
2025年1月~5月
PNP-NCRPO(メトロ・マニラ首都圏警察局)は、メトロ・マニラ全体での犯罪件数が前年同期比で 26%減少 したと報告しています。
2025年1月~4月
同期間中、メトロ・マニラでの犯罪率は 26.08%減少 しました。
特定の犯罪傾向と懸念
【サイバー犯罪とオンライン詐欺】
2025年5月、マニラのパサイ市で、オンラインギャンブルや詐欺を行っていた疑いで、主に中国、ベトナム、韓国などの国籍を持つ401人が逮捕されました。
これらの犯罪は、特に中国人学生をターゲットにしたものが多く、注意が必要です。
【誘拐事件】
2025年2月、14歳の中国人学生がマニラで誘拐され、指を切断されるなどの暴行を受けました。この事件は、中国人学生を狙った犯罪の一例として報じられています。

リゾート地として人気のセブ
フィリピンのリゾート地として人気のセブは、マニラと同じレベル1ながらマニラよりは治安のよい地域と言えます。しかし、世界中から人が訪れることから、旅行客や留学生を狙う犯罪があるのも事実です。
美しいビーチや豊かな自然が魅力的な地域ですが、日本のリゾート地の安全なイメージとは異なるため注意しましょう。
セブ市の犯罪傾向と治安状況(2025年)
- 強盗・窃盗
観光地や繁華街ではスリやひったくりが発生しています。特に、夜間の外出時や人通りの少ない場所では注意が必要です。 - 詐欺・サイバー犯罪
オンライン詐欺や偽の観光サービスを提供する業者による被害が報告されています。特に、SNSや旅行サイトを通じての情報収集が重要です。 - 麻薬関連犯罪
一部の地域では麻薬の取引や使用が問題となっています。治安の良いエリアではこのような犯罪は少ないものの、注意が必要です。
危険地域とされるミンダナオ地域
危険地域とされるミンダナオ地域は、その噂通り一部地域ではレベル3の渡航中止勧告が出されています。過去に比べると落ち着いてきましたが、イスラム過激派や武装勢力が活動している地域も含まれており、実際に爆発事件なども起こりました。
一方で、おもにレベル2の地域には、暖かい気候や豊かな自然、歴史を感じる街並みといった魅力的な要素もあります。
ミンダナオ島の治安状況(2025年)
- ダバオ市
治安が良好とされ、観光地としても人気があります。犯罪発生率は低く、特に夜間の外出時にも比較的安全とされています。 - カガヤン・デ・オロ市
経済発展が進んでおり、治安も安定しています。観光施設や商業施設も充実しており、訪問者にとっても安心な地域です。 - サンボアンガ市
過去に治安上の問題が報告されていましたが、近年では治安が改善されつつあります。ただし、依然として注意が必要な地域もあります。 - バシラン州、スルー州、マギンダナオ州
これらの地域では、過去に武装勢力の活動や紛争が報告されており、治安が不安定な場合があります。特に旅行者は訪問を避けることが推奨されます。
特定の犯罪傾向と懸念
バシラン州やスルー州では、依然として武装勢力の活動が報告されており、治安上の懸念があります。特に、地元住民との関係が深い地域では、外部者の立ち入りが制限される場合があります。
過去には外国人観光客をターゲットにした誘拐事件が報告されており、特に治安の不安定な地域では注意が必要です。
また一部の地域では、麻薬の取引や使用が問題となっており、特に夜間の外出時には注意が必要です。
ミンダナオ島に武装勢力が集結する主な理由
- 宗教・民族の違いによる対立
ミンダナオ島には、先住のムスリム系民族(モロ族)が多く暮らしており、一方でキリスト教徒(フィリピン本土からの移住者)が増え続けています。この宗教・民族の違いが長年の摩擦や対立の根源になっています。 - 土地問題と経済的な不平等
ミンダナオ島の豊かな自然資源や土地は、政府やキリスト教移住者によって開発・占拠されることが多く、モロ族の生活基盤が脅かされてきました。 - 政治的な自治要求
モロ族は長年にわたり、自治権拡大や独立を求めて政府と交渉を続けてきました。・1970年代以降、モロ・イスラム解放戦線(MILF)やモロ・イスラム解放軍
MNLFなどの武装組織が結成され、自治や独立を目指す武装闘争を展開。
1990年代以降、和平交渉も行われてきましたが、完全な解決には至っていません。 - 地理的・社会的要因
ミンダナオ島の一部はジャングルや山岳地帯が多く、武装勢力の隠れ家や活動拠点に適しています。 - 国家の対応の限界と腐敗
政府側の腐敗や不十分な公共サービス、治安対応の限界も、武装勢力の勢力維持に影響しています。
地元住民の信頼を得られず、武装組織が「保護者」としての役割を果たすケースもあります。
フィリピンで被害に遭う可能性のあるトラブル
フィリピンで旅行客や留学生が被害に遭う可能性のあるトラブルをみていきましょう。
スリや置き引き
軽犯罪に含まれるスリや置き引きは、フィリピンでもよく見られるトラブルです。ポケットに入れたスマホや背中側のバッグに入れた財布などはスリの標的になるため、持ち歩き方を工夫しましょう。
また、日本ではありがちな、公共施設の席に荷物を置いたまま席を立つ行為も危険です。日本での感覚に慣れているとこのような被害に遭いやすいため、荷物から目を離さないように注意してください。
ぼったくりや詐欺
フィリピンでもぼったくりや詐欺といったトラブルが多く見られます。
ぼったくりではモノやサービスの提供時に法外な値段を要求され、特にタクシー乗車時に被害に遭う可能性が高いと言えます。近年では事前に乗車金額がわかる「Grab」という配車サービスが普及しているため、ぜひ活用してください。
詐欺としては、簡単なギャンブルを持ちかけられる「トランプ詐欺」や、貴重品を盗まれたという口実でお金を要求される「寸借詐欺」が有名です。話しかけてきた人を短時間で信用しないよう注意しましょう。
フィリピンで犯罪に巻き込まれた際の対処法(日本人観光客向け)

1. 事件・事故に遭ったらまず行うべきこと
① 安全な場所へ移動する
まずは身の安全を確保しましょう。可能であれば、周囲の人が多い場所や警察署、ホテルなど安全な場所へ移動してください。
② 怪我の応急処置
怪我がある場合は、すぐに医療機関へ行きましょう。大きな病院はマニラ、セブ、ダバオなど主要都市にあります。
2. 警察への通報方法
① 緊急通報番号
フィリピンの警察緊急番号は 117 または 911 です。スマホや公衆電話からかけられます。
② 最寄りの警察署へ直接行く
事件現場近くの警察署へ直接赴き、被害届(Police Report)を作成してください。
③ 被害届(Police Report)の作成
警察署で事情を説明し、被害届の作成を依頼します。
事件の日時、場所、被害内容、犯人の特徴などをできるだけ詳しく伝えましょう。
警察署で作成された被害届は、今後の保険請求や領事館への報告に必要です。
3. 日本人としての対応と大使館・領事館の役割
① 在フィリピン日本大使館・総領事館への連絡
事件・事故に遭ったら、速やかに日本大使館(マニラ)または領事館(セブ、ダバオ)に連絡しましょう。
施設 | 連絡先 | 住所・備考 |
---|---|---|
在フィリピン日本大使館(マニラ) | +63-2-887-1111 | マニラ市内 |
在セブ日本国総領事館 | +63-32-231-6156 | セブ市 |
在ダバオ日本国総領事館 | +63-82-224-9501 | ダバオ市 |
大使館は、警察への通訳支援、医療機関の紹介、領事警察への報告、帰国支援などのサポートを提供します。
② 領事サービスを受けるための必要書類
- パスポート(原本)
- 警察署で発行された被害届(Police Report)
- 事故証明書や医療診断書(怪我がある場合)
- 航空券など滞在証明書(帰国手続きが必要な場合)
4. 被害届・証明書類の重要性
被害届は、盗難・紛失したパスポートやクレジットカードの再発行手続き、旅行保険の請求に必要です。
警察署で発行される「Incident Report」や「Police Clearance」も大切な書類なので保管してください。
5. 保険会社への連絡
旅行保険に加入している場合、被害届や医療証明書を添えて速やかに保険会社に連絡しましょう。フィリピンでは、盗難や事故の際に必ず警察証明を求められます。
6. 注意点と心得
•冷静に行動
パニックにならず、落ち着いて状況を説明しましょう。
•犯罪被害の再発防止
貴重品はホテルのセーフティボックスに預け、外出時は最低限の現金とコピーの身分証明書を携帯しましょう。
•言葉の壁に備える
英語が通じない場合も多いので、簡単な英語フレーズや通訳アプリを準備すると安心です。
•警察とのやり取りは記録する
担当者の名前や連絡先、作成された書類のコピーを必ずもらいましょう。
•危険地域は避ける
夜間の一人歩きや治安の悪いエリアへの立ち入りは控えてください。
旅行や留学でのトラブル対策5つのポイント
旅行や留学でのトラブル対策として挙げられる5つのポイントを解説します。
現金は必要な分だけ、高価なものは持ち歩かない
現金やクレジットカードは必要最低限だけ持ち、お金を持っている人と思われるような高価なものは持ち歩かないようにしましょう。ブランド品のバッグや財布はもちろん、過去にはイヤリングを盗まれた事例もあったため、アクセサリー類にも注意してください。
バッグは体の前側に密着させ、目を離さない
バッグは体の前側に密着し、目を離さないような体勢を取りましょう。ボディバッグのような形が理想的です。特に混雑した場所では、斜めがけバッグを背後に回したりリュックを背負うのは危険と言えます。レストランやベンチなどで席に荷物を残したまま離れる行為も危険です。
夜間の外出を避け、危険なエリアに近づかない
安全と言われているエリアでも、夜間の外出は避け、危険な路地裏などには近づかないようにしましょう。旅行の場合、宿泊場所のエリア選定にも注意が必要です。やむを得ず夜間外出や危険エリアに近づくときは集団で行動するのがおすすめです。
移動にはGrabタクシーを使い、ジプニーには乗らない
フィリピンではジプニー(ジープ)と呼ばれる伝統的な乗合バスがありますが、狭い車内で人が密集するためスリ被害が多く発生します。現地の人々が使う交通手段を試してみたくもなりますが、不安な人は乗らないようにしましょう。
東南アジアでは日本のUberに似たGrabというアプリでタクシーを呼べます。クレジットカードを登録しておけば運転手と金銭のやり取りをせずに支払いが完結するので、ぜひ使用してください。
話しかけててきた人をすぐに信用しない
フィリピンでは、フレンドリーに話しかけたり簡単な日本語で話しかけることで日本人を油断させ、詐欺を行うケースがあります。例えば「簡単なトランプゲームをしよう」と持ちかけ、だんだんと大金をかけるいかさまのギャンブルに発展させていく「トランプ詐欺」。「バッグを盗まれたからお金が必要」と言ってこちらにお金を要求してくる「寸借詐欺」などがあります。
また、ストリートチルドレンに慈悲の心で少しのお金を渡してしまうと、次々にストリートチルドレンが集まってきてしまうこともあるため注意してください。
まとめ
フィリピンの治安はこの数十年で格段に良くなってきているものの、それでも日本と比べると治安が悪いと感じてしまうのは事実です。スリや詐欺の被害に遭わないためにはフィリピンの現在の治安状況を理解しておくことが重要です。安全な旅行・移住のために、トラブル対策をしっかりと行ってくださいね。
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