フィリピン

フィリピンの税金事情2025年版 「個人・法人・外国人まで一挙解説」

「フィリピンで働いているけど、税金ってどうなっているの?」
「ビジネスを始めたいけど、法人税やVATって何?」

このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
フィリピンの税制度は日本と似ている部分もありますが、実は「居住期間」「所得の種類」「事業規模」によって課税の仕組みが大きく変わります。

この記事では、初めての方でも理解できるように、最新の税制情報と実例を交えて詳しく解説します。読み終える頃には、あなたも「フィリピンの税金マスター」になっているはずです!

ご不明点がある方は、最新のフィリピン情報や税金に関する情報などお気軽にLINEにてお問い合わせください。

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フィリピンの税金の基本構造

フィリピンの税制を管轄するのは、内国歳入庁(BIR:Bureau of Internal Revenue)
個人、企業、外国人を問わず、フィリピンで所得を得る人はこのBIRに対して税金を納める義務があります。

主な税金の種類は次の3つです。

  •  所得税(Income Tax) 個人・法人の所得に対して課税
  • 付加価値税(VAT) 商品やサービスに課される間接税(日本の消費税に近い)
  • その他の税金:不動産税、印紙税、地方税など

フィリピンでは「誰がどこでどんな収入を得ているか」で課税方法が変わるため、まずは自分の立場を正確に把握することが重要です。

個人所得税(Individual Income Tax)


◼︎ 居住者か非居住者かで変わる課税範囲

フィリピンでは、滞在日数や生活の拠点によって「居住者(Resident)」か「非居住者(Non-resident)」で区分されます。

区分 定義 課税範囲
Resident Citizen フィリピンに居住し、現地に生活拠点を持つ個人 全世界所得に課税(海外収入も含む)
Non-Resident Citizen / Alien 一定期間のみ滞在、もしくは国外在住者 フィリピン国内で得た所得のみ課税

たとえば、駐在員として1年以上滞在している人は「居住者」とみなされ、フィリピン国外の収入も申告対象になる場合があります。

個人所得税率(2023年以降)

年間課税所得(PHP) 税率
250,000以下 免税
250,001~400,000 15%
400,001~800,000 20%
800,001~2,000,000 25%
2,000,001~8,000,000 30%
8,000,000超 35%

たとえば、年収500,000ペソの場合、
250,000ペソまでは免税、残り250,000ペソに15%が課税されるため、37,500ペソの所得税となります。

フィリピンでは「給与から源泉徴収(Withholding)」されることが一般的なので、会社員の方は自分で申告する必要はありませんが、副業や事業収入がある人は自分で申告(Annual ITR)が必要です。

法人税(Corporate Income Tax)

ビジネスオーナーや投資家にとって気になるのが法人税です。
2021年に施行された「CREATE法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)」によって、税率が引き下げられ、アジアでも競争力のある水準になりました。

企業区分 条件 税率
大企業 課税所得が5,000,000ペソ超 または 総資産100,000,000ペソ超 25%
中小企業(MSME) 課税所得が5,000,000ペソ以下 且つ 総資産100,000,000ペソ以下 20%
外国企業の支店(Branch) フィリピン国内所得に課税 25%

中小企業にとっては、税率が20%に引き下げられたことで、起業や投資のハードルが大きく下がりました。
さらに、経済特区(PEZAやBOI)に登録した企業には最大6年間の法人税免除(Income Tax Holiday)などの特典もあります。

付加価値税(VAT)とは?日本の消費税にあたる税金

フィリピンのVAT(Value Added Tax)は、日本の消費税にあたる税金で、税率は一律12%です。

年間売上が3,000,000ペソを超える企業・個人事業主はVAT登録が義務化されています。
一方で、小規模事業者は「Percentage Tax(3%)」という簡易課税方式を選ぶことができます。

たとえば

  • 月売上200,000ペソ → VAT登録義務なし(3%適用)
  • 年売上5,000,000ペソ → VAT登録義務あり(12%適用)

VAT登録者は毎月または四半期ごとにBIRへ申告し、売上税額から仕入税額を差し引いて納税します。

地方税・その他の税金

フィリピンでは国税のほか、自治体ごとに地方税も課されます。

税金の種類 内容
不動産税(Real Property Tax) 土地や建物の評価額に対して課税(約1〜2%)
印紙税(Documentary Stamp Tax) 契約書、株券、融資書類などに課税
自動車税(Motor Vehicle User’s Charge) 車両登録時に課税
関税(Customs Duties) 輸入品に対して5〜30%課税

自治体によって税率が異なるため、不動産投資や事業所設立の際は所在地の税率を確認しておくことが大切です。

外国人・駐在員の税務

外国人労働者や駐在員の場合、滞在期間によって課税方法が異なります。

区分 定義 税率
Resident Alien(183日以上滞在) フィリピン国内所得に対して課税 累進課税(最大35%)
Non-Resident Alien(183日未満滞在) 国内所得のみ課税 一律25%

また、日本とフィリピンは「租税条約」を締結しているため、同じ所得に二重課税されることを防ぐ制度もあります。
日本で納税した所得がある場合は、フィリピンでの申告時に控除されるケースもあります。

納税・申告の流れ

フィリピンでは、すべての納税者に「TIN(Tax Identification Number)」の取得が義務づけられています。
BIRで登録を行うと、オンラインでの納税も可能になります。

主な手続きの流れは次の通りです。

  1. TIN登録(BIRオフィスまたはオンライン)
  2. 毎月または四半期ごとの申告(所得税・VAT・源泉税)
  3. 年次申告(Annual ITR):翌年4月15日までに提出

電子申告システム(eFPS/eBIRForms)が整備され、近年ではオンライン納税が主流になっています。

マニラで事業をする雇い主の注意点


フィリピン・マニラでビジネスを展開する場合、日本とは異なる「税務」と「労務」の考え方に注意が必要です。
特に雇用を伴う事業では、BIR(税務署)・DOLE(労働雇用省)・SSS(社会保障機構)など複数の機関への対応が求められます。ここでは、マニラで事業を行う経営者が特に注意すべき代表的なポイントを紹介します。

正式な事業登録とBIR番号の取得

フィリピンで合法的にビジネスを行うには、まず以下の登録が必要です。

登録機関 目的・内容
SEC(Securities and Exchange Commission)または DTI 法人登記・商号登録
LGU(地方自治体) 営業許可(Mayor’s Permit)取得
BIR(内国歳入庁) TIN(納税者番号)発行、領収書登録、帳簿認証
SSS / PhilHealth / Pag-IBIG 従業員の社会保障・医療・住宅基金への登録

これらの登録が完了して初めて「正式な営業活動」とみなされます。
無登録で営業を行うと、罰金・営業停止命令の対象になるため注意が必要です。

給与に関する税金・社会保険の控除

雇用主には、従業員の給与から以下の税金・社会保険料を天引き(Withholding)して納付する義務があります。

控除項目 内容 納付先
Withholding Tax 給与所得税。所得に応じて0〜35% BIR
SSS(社会保障) 退職金・傷病手当などのための社会保障 Social Security System
PhilHealth 公的医療保険 PhilHealth
Pag-IBIG Fund 住宅ローン・貯蓄制度 Pag-IBIG

特にBIRへの「源泉徴収税の月次申告(Form 1601-C)」は忘れがちですが、
遅延・未申告には罰金(最大25%)+利息が発生します。

領収書(Official Receipt / Invoice)の発行義務

フィリピンでは、事業者が商品・サービスを販売する際にBIR認可済みの領収書・請求書を発行しなければなりません。これは日本のインボイス制度に近い考え方です。

領収書には次の情報が必要です。

  • BIR承認番号(Authority to Print)
  • 会社名・住所・TIN
  • 顧客情報
  • VAT金額の明示

不正な領収書(未承認・白紙など)を使用した場合、最大で50,000ペソ以上の罰金が科されることがあります。

年次報告・決算報告の提出

すべての企業は、BIRとSECに対して毎年決算報告を提出する義務があります。

  • BIR Form 1702:法人所得税の確定申告(毎年4月15日まで)
  • Audited Financial Statement(監査済み決算書)
  • SEC General Information Sheet(会社情報更新)

また、税理士(Certified Public Accountant)の監査が必要な場合も多く、
帳簿や領収書は少なくとも10年間保管することが求められます。

税務調査(BIR Audit)への備え

BIRは定期的に企業への監査(Tax Audit)を実施します。
領収書や帳簿の不備、未申告所得、VATの過少申告などが発覚すると、追徴課税+罰金+利息が課されます。

対策として

  • 領収書・請求書・経費伝票はすべて保存
  • 税理士(CPA)またはBookkeeperを雇う
  • 電子帳簿(eBIRForms / eFPS)を活用

を徹底しておくことが重要です。

外国人スタッフを雇う場合の注意点

外国人を雇用する場合は、DOLE(労働雇用省)およびBureau of Immigrationへの手続きが必要です。

必要書類 目的
AEP(Alien Employment Permit) 外国人労働者の雇用許可証
Work Visa(9g) 合法的な就労ビザ

これらを取得せずに外国人を雇用した場合、不法就労扱いとなり、会社側も罰金・業務停止処分を受ける可能性があります。

雇用契約と労働法の遵守

フィリピンの労働法は従業員保護が非常に強く、解雇や契約終了の際は正当な理由と事前通知が求められます。

また、最低賃金は地域ごとに異なり、マニラ首都圏では2025年時点で1日あたり約610ペソとなっています。

  • 正社員:13か月給与(13th Month Pay)が法定義務
  • 残業手当(Overtime Pay):時給の1.25倍以上
  • 休日勤務手当(Holiday Pay):2倍の支払い

雇用契約書には、勤務条件、報酬、勤務時間、解雇条件を明記する必要があります。

マニラで働く日本人・雇用される側が気をつけるべき税金・雇用・生活ルール

フィリピンで仕事をする日本人は、雇用形態・滞在期間・報酬の受け取り方によって、
課税・社会保険・ビザの扱いが大きく変わります。

「会社に任せておけば大丈夫」と思っていると、後で追徴課税やビザ違反などのトラブルになるケースもあります。
ここでは、日本人がフィリピンで働く際に注意すべき重要ポイントをまとめます。

就労ビザとAEP(労働許可証)の確認

外国人がフィリピンで働くには、必ず以下の許可を取得する必要があります。

書類名 発行機関 目的
AEP(Alien Employment Permit) DOLE(労働雇用省) 外国人を雇用するための労働許可証
9g Work Visa Immigration Bureau(入国管理局) 合法的に就労するためのビザ

• AEPがなければ「労働資格なし」とみなされ、会社側・本人双方に罰則が科されます。

• AEPと就労ビザの両方が揃って初めて「正式就労」が認められます。

• 駐在員の場合は、日本本社が発給する派遣命令書や雇用契約書も提示が求められることがあります。

雇用契約書の内容を必ず確認する

雇用契約書(Employment Contract)は、フィリピン労働法(Labor Code)に基づいた条件である必要があります。口約束での就労や、契約書が英語でよく分からないままサインするのは絶対に避けましょう。
契約書では、特に次の項目を確認してください。

項目 確認すべき内容
基本給(Basic Salary) 通貨単位(ペソか円か)と支給形態(月給・日給)
勤務時間・休暇 法定の8時間勤務・週休1日が守られているか
13th Month Pay 年1回のボーナス(法定義務)
税金・社会保険 源泉徴収(Withholding Tax)・SSS・PhilHealthへの加入が明記されているか
契約期間・解雇条件 期間限定契約か正社員か、退職時の通知期間

特に現地採用の場合、給与が「Gross(税引前)」なのか「Net(手取り)」なのかを明確にしておくことが大切です。これを誤解していると、最初の給与で「思ったより少ない…」という事態になります。

所得税(Income Tax)の仕組みを理解する

フィリピンで給与を受け取る場合、雇用主が所得税を源泉徴収し、毎月BIRに納付します。

日本人の場合でも、183日以上滞在していれば「Resident Alien(居住外国人)」とみなされ、
現地従業員と同じく累進課税の対象になります。

年間所得(PHP) 税率
250,000以下 免税
250,001~400,000 15%
400,001~800,000 20%
800,001~2,000,000 25%
2,000,001~8,000,000 30%
8,000,000超 35%

• 滞在期間が短い(183日未満)場合は「Non-Resident Alien」となり、所得の25%が一律課税。

• 日系企業に勤めていても、現地支給分はBIRの課税対象になります。

• 日本との二重課税を防ぐために、租税条約による税額控除を利用できる場合があります

社会保険制度(SSS・PhilHealth・Pag-IBIG)

フィリピンでは、雇用者も外国人労働者も原則として社会保険に加入します。

制度名 内容
SSS(Social Security System) 年金・傷病・出産手当などをカバー
PhilHealth 医療費の補助を受けられる公的保険
Pag-IBIG Fund 住宅購入や積立貯金に利用可能

これらの保険料は給与から天引きされ、会社が拠出分を上乗せして納付します。
加入していないと、医療費全額負担や年金受給資格なしといったリスクがあるため、初出勤時に登録状況を確認しましょう。

給与の受け取りと為替の注意

フィリピンペソを持っている女性

給与は通常ペソ建てで支払われますが、駐在員や特別契約の場合はドル・円建ても可能です。ただし、為替変動リスクがあるため、ペソ支給+円送金のバランスを考えることが大切です。

たとえば

  • ペソ建て給与 → 現地生活費に充当
  • 円建て送金 → 日本での貯金・ローン支払いに使用

また、Gcashや銀行振込を利用する場合、送金手数料・為替手数料(約1〜2%)にも注意しましょう。

税務申告(Annual ITR)の義務

多くの企業は社員の代わりに年次申告を行いますが、
副業・不動産収入・フリーランス業務がある場合は、自分でBIRへ確定申告(Form 1701)を行う必要があります。

特に、オンライン業務(在宅・リモートワーク)で海外クライアントから報酬を得ている場合、それも「フィリピン国内所得」として申告対象となることがあります。

日本との二重課税を防ぐ方法

フィリピンと日本の間には「租税条約(Tax Treaty)」があり、同じ所得に二重で課税されることを防ぐ仕組みがあります。

日本で確定申告を行う際に、フィリピンで支払った税金額を控除することができます(外国税額控除)ただし、そのためにはフィリピン側のBIR納税証明書(Form 2316など)が必要です。

フィリピンの労働文化・人間関係は?日本との違い


フィリピンの職場文化は、フレンドリーで上下関係が緩やかですが、
その分「チームの和」を乱す行動がトラブルの原因になることもあります。

  • 礼儀正しく、でも親しみやすく
  • 指示よりも協調を重視
  • 遅刻・欠勤の扱いは厳格(理由書提出が必要)

また、労働法により「過度な残業」や「休日出勤」は厳しく制限されているため、
日本の感覚で働きすぎると逆に会社側が罰則を受けることもあります。

フィリピンで働くということは、単なる「海外勤務」ではなく、現地のルールを学びながら生きることです。
税金や契約を正しく理解しておけば、トラブルに巻き込まれることなく、安心してマニラでのキャリアを築くことができます。

日本人がフィリピンで働く前に確認すべき10のチェックリスト

フィリピンでの就労は、ビザ・税金・社会保険など、国ごとに異なるルールを理解しておくことが大切です。
特にマニラで働く日本人にとっては、「会社が全部やってくれるだろう」と油断してしまうと、思わぬトラブルにつながることも。

ここでは、渡航前・就業前に必ず確認しておきたい10のポイントを、簡単なチェックリスト形式でまとめました。

# 確認項目 内容
AEP(労働許可証)と就労ビザの取得 AEPと9Gビザの両方が揃って初めて合法的に就労できます。必ず発行状況を自分でも確認しましょう。
雇用契約書の内容を理解する 給与(Gross/Net)、通貨、契約期間、13th Month Payの有無などを確認。英語の契約でも曖昧な点は質問を。
社会保険(SSS・PhilHealth・Pag-IBIG)の加入 給与から保険料が天引きされているか、会社が適切に拠出しているか確認します。
源泉徴収(Withholding Tax)の確認 給与明細に税金が正しく計上されているか。年末のForm 2316は必ず保管。
滞在日数による課税区分の理解 183日を超えると「居住外国人」として累進課税対象。滞在期間を確認しておきましょう。
副業やフリーランス収入の申告 会社以外の所得がある場合、Form 1701で確定申告が必要になるケースがあります。
給与通貨・送金方法の確認 給与がペソ建てか円建てか、送金手数料や為替差損が発生しないかを確認。
年次申告義務(ITR)の有無 会社が代行してくれる場合も多いですが、副収入がある場合は自分でBIRに申告します。
租税条約と二重課税の確認 日本・フィリピン間の租税条約に基づき、フィリピンで支払った税金を日本側で控除できる場合があります。
労働文化・人間関係の理解 フィリピンの職場文化はフレンドリーですが、チームワークを重視。報連相を大切に。

まとめ

フィリピンで働く日本人にとって、税金やビザ、社会保険、雇用契約といった制度は、慣れない環境では複雑に感じられます。しかし、基本的なルールを理解し、契約書やチェックリストを確認するだけでも、トラブルの大半は未然に防ぐことができます。

特にマニラでは、AEPや就労ビザの取得、源泉徴収税の仕組み、社会保険の加入状況、契約内容の明確化が重要です。また、給与通貨や送金方法、滞在日数による課税区分も意識しておく必要があります。
このように事前に確認と準備を行うことで、安心して働ける環境を作りながら、現地でのキャリアや生活をスムーズにスタートすることができます。

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