高い経済成長率と人口増加を背景に、投資家の注目を集めているフィリピンの不動産市場。そこで、「実際の価格推移はどうなっている?」「不動産価格は今後も上昇する?」と疑問を持っている人もいるのではないでしょう。
この記事では、フィリピン不動産の価格推移や各国との比較、価格上昇を支える要因を解説します。不動産投資を視野に入れているなら知っておきたいリスクやその対策も紹介するので、最後までチェックしてください。
目次
フィリピン不動産の価格推移
出典:BANGKO SENTRAL NG PILIPINAS Residential Real Estate Prices Increase in Q2 2024
フィリピンの不動産価格は2020年7月に最高値を記録した後、新型コロナの影響で一時的に下落しましたが、2021年から回復傾向にあります。特にコンドミニアムの価格が上昇しており、2022年第1四半期には前年同期比14.7%の上昇*¹を記録しました。
2024年第2四半期の統計では、不動産価格が前年同期比2.7%上昇*²しています。住宅タイプ別では、コンドミニアムが前四半期比4.2%上昇した一方、タウンハウスは2.6%下落*²しています。
コンドミニアムの価格は上昇傾向を維持しており、今後もコロナ禍前の価格水準への回復と、さらなる上昇が期待されています。それでいて、他のアジア諸国と比べると手頃な価格帯を維持しているのも特徴です。
*¹参考:BANGKO SENTRAL NG PILIPINAS Residential Real Estate Prices Continue to Rise in Q1 2022
*²参考:BANGKO SENTRAL NG PILIPINAS Residential Real Estate Prices Increase in Q2 2024
フィリピンの不動産価格とREIT法施行規則の改正の関係性
フィリピンの不動産価格とREIT法施行規則の改正には、密接な関係があります。2020年1月に行われたREIT法施行規則(IRR)の改正は、フィリピンの不動産市場に大きな影響を与えました。
おもな改正点として、REITの最低浮動株比率要件が67%から33%に引き下げられ、REITへの不動産移転に係る付加価値税(VAT)が免税となりました。これにより、不動産会社がREITを通じて資金調達を行いやすくなり、不動産開発が促進されました。
この規制緩和により、大手不動産会社がREIT上場に積極的に動き出し、新たな不動産投資のチャンスが生まれています。
REITの活性化は、不動産市場全体の流動性を高め、投資家にとって新たな投資機会となります。REITを通じた資金調達により、質の高い不動産開発が促進され、フィリピンの不動産市場全体の価値向上につながることが期待されています。
REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略称で、日本語では「不動産投資信託」と呼ばれています。投資家から集めた資金を主に不動産に投資し、その収益(賃料収入や売却益)を投資家に分配する金融商品です。
フィリピン不動産の価格上昇を支える要因
フィリピン不動産の価格が上昇している理由を3つの視点から解説します。
経済成長と人口増加
フィリピンは高い経済成長率を維持しており、2025年には上位中所得国入りが見込まれています。また、人口ボーナス期が2050年まで続くと予測されており、若年層を中心とした労働力が経済を押し上げています。
なかでも中間層の増加が著しく、これが住宅需要の拡大につながっています。特に、マニラ首都圏では不動産価格が上昇しており、この傾向は今後も続くと予想されます。
インフラ整備への注力
フィリピン政府は、道路、鉄道、空港などのインフラ整備に力を入れています。これにより、都市部の交通利便性が向上し、新たな開発地域が生まれています。
2026年には、空港からマニラ全主要都市を結ぶ、フィリピン初の新地下鉄が開通予定です。この開通により駅周辺の物件はもちろん、主要都市周辺の価格上昇が期待されています。
海外投資家からの資金流入
フィリピンの不動産市場は、成長性と将来性から多くの海外投資家の注目を集めています。特に、コンドミニアム(マンション)の需要が高まっており、マニラ首都圏やセブ島などの物件価格は上昇傾向にあります。また、観光業の成長により、リゾート物件への投資需要も増加しています。
コンドミニアム投資と一戸建て投資の動向
フィリピン不動産投資における、コンドミニアム投資と一戸建投資の動向を解説します。
コンドミニアム投資
高級コンドミニアムの市場は、富裕層の増加や海外投資家の流入によって安定した成長を続けています。富裕層は質の高い設備やサービスを重視しており、立地のよい物件を好む傾向にあります。
一方、中流階級向けの市場も、経済成長に伴う中流階級の拡大により需要が増加しています。手頃な価格でありながら、快適に生活できる物件であることが重視されてます。
一戸建て投資
戸建て住宅も一定の人気を維持しています。特に都市の郊外では、十分な土地に広々とした住宅を建てられるため、ファミリー層を中心に支持を集めています。
コンドミニアム市場と同じく、富裕層向けの市場では広大な敷地かつ豪華な設備を備えた物件に需要があります。一方で、中流階級向けの市場では、手頃な価格かつ快適に過ごせる物件が支持されています。
外国人がフィリピン不動産を購入する際の制限
日本人を含む外国人投資家に対して設けている制限として、代表的な3つを解説します。
土地・戸建ての所有はできない
フィリピンの法律では、外国人による土地や戸建て住宅の所有が禁止されています。外国人の個人はもちろん、外国企業も直接的に土地を所有することはできません。
例外として、フィリピン国籍を持つ配偶者との共同名義での所有や、資本の60%以上がフィリピン資本である法人を通じての間接的な所有は可能です。しかし、実質的には外国人による土地の所有は困難と言えます。
コンドミニアムであれば価格規制なく購入できる
コンドミニアムの購入に関しては比較的自由度が高く、外国人による購入と所有が認められています。さらに、購入できるコンドミニアムの価格に上限や下限などの規制はありません。
コンドミニアム全体の外国人所有率が40%を超えてはいけないという規制はありますが、その制限内であれば、高級物件はもちろん手頃な価格の物件まで購入可能です。
基本的にはビザが不要
フィリピンで不動産を購入する際、特別なビザは必要ありません。ただし、長期滞在を予定している場合や、不動産を利用したビジネスを展開する場合には、適切なビザの取得が必要になることがあります。
フィリピン不動産投資のリスクと対処法
フィリピン不動産投資におけるリスクと、リスクを避けるための対処法を解説します。
プレビルド(建設前)物件の竣工リスク
フィリピンにおける一般的な投資形態として、プレビルド(建設前)物件への投資が挙げられます。しかし、これ位には竣工リスクがあることも理解しておきましょう。
プレビルド物件の投資の場合、デベロッパーの経営状況や建設工事の進捗によって完成が大幅に遅延したり、最悪の場合、建設自体が中止となる可能性があります。建設業界の事情や法規制、許認可の遅れなどが影響し、工期が遅延するケースが少なくありません。
竣工リスクの対策としては、実績のある信頼できるデベロッパーを選ぶことが重要です。過去のプロジェクトの完成実績や財務状況などを確認し、信頼できるかどうか判断してください。また、契約書の内容を詳細に確認し、遅延した場合の違約金や解約条件などを明確にしておくことも大切です。
流動性リスク
フィリピンの不動産市場は、日本と比較して流動性が低い傾向があります。そのため、希望するタイミングで希望する価格で売却することが難しい場合もあるでしょう。特に、地方都市の場合、買い手を見つけるまでに時間がかかることがあります。
流動性リスクを軽減するためには、人気のエリアや物件を選ぶことが重要です。マニラ首都圏のマカティやBGCなどのビジネスエリアや、セブ島のリゾートエリアなどは、比較的流動性が高いと考えられます。
また、物件の価格設定にも注意が必要です。相場価格よりも高い価格で売りに出すと、買い手が見つかりにくくなるため、適切な価格を設定するようにしましょう。
為替変動リスク
フィリピン不動産投資には、為替変動リスクがつきものです。日本円とフィリピンペソの為替レートは常に変動しており、円高になると、円ベースでの資産価値が目減りする可能性があります。また、家賃収入を日本円に換算する際にも、為替レートの影響を受けます。
為替変動リスクに備えるためには、長期的な視点で投資を行うことが重要です。短期的な為替変動に一喜一憂せず、長期的な経済成長を見据えて投資を行いましょう。
また、外貨預金や現地通貨での資産を増やし、為替リスクを分散するのも手段の一つです。
フィリピン不動産投資の失敗を避けるためのコツ
フィリピン不動産投資で失敗を避けるために、下記のコツを押さえておきましょう。
信頼できる不動産業者を見つける
フィリピン不動産投資で成功するためには、信頼できる不動産業者選びが不可欠です。現地にネットワークを持ち、リアルな情報を得られる業者を選ぶことで、安心して投資を始められるでしょう。
法的手続きを理解しておく
フィリピンで不動産を購入する際には、契約書の内容や税金など、法的手続きに関する正しい知識を持つことが重要です。不動産投資では、外国人に対する規制も存在するため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
不動産市場の動向を把握する
不動産市場は常に変動しているため、適切なタイミングで投資をするためには市場動向の把握が重要です。経済成長率やインフラ整備など、さまざまな要素が不動産価格に影響を与えるため、常に最新の情報を収集するように努めましょう。
まとめ
フィリピンの不動産市場は、今後も成長が見込まれる魅力的な投資先と言えるでしょう。政府は都市開発にも力を入れており、それがさらなる不動産市場の活性化につながっています。ただし、不動産投資にはリスクが伴うことも理解しておきましょう。
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