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フィリピンのカントリーリスクとは?政治・経済リスク対策や将来性を解説

カントリーリスク

「カントリーリスク」とは、政治や経済、治安など、国全体に関わるリスクのことを指します。フィリピンへの投資や移住を検討する際、こうしたリスクについて不安を感じる方も少なくないかもしれません。

この記事では、フィリピンのリスク評価をもとに、主要都市ごとの違いや具体的な対策、将来性についてもわかりやすく解説します。投資先としての判断に迷っている方は、フィリピンの魅力とリスクをバランスよく理解し、自分に合った選択を考えてみてください。

カントリーリスクとは何か?

カントリーリスクとは、海外への投資や取引を行う際に、その国特有の政治・経済・社会情勢の変化によって損失が生じる可能性を指します。たとえば、政変や経済危機、法律の変更、社会不安、自然災害など、現地で起こるさまざまな事象が企業の収益や資産価値に悪影響を及ぼすリスクとされています。

一般に、カントリーリスクは先進国よりも新興国で高まる傾向があり、海外不動産への投資や移住を検討する際には見過ごせない重要な要素です。

カントリーリスクの要因

カントリーリスク

カントリーリスクを形づくる主な要素には、政治、経済、法制度、社会・文化、自然災害といったいくつかのカテゴリがあります。これらが複雑に絡み合うことで、その国全体のリスクの大きさを左右します。

ここではフィリピンを例に挙げながら、各要素がどのように関係しているのかをわかりやすく解説していきます。

政治リスク

政治リスクとは、政情不安や政策の急な変更など、政治的な要因で生じるリスクのことです。政権交代やテロ、紛争などが含まれ、資産の保全や送金に影響が出る場合もあります。

フィリピンでは、1986年の民主化以降、平和的な政権交代が続いており、一定の政治的安定を維持しています。

また、南部では過去に武装勢力との紛争がありましたが、近年は和平が進み、治安は改善傾向にあります。最新の現地情報を確認しておくことが大切です。

経済リスク

経済リスクとは、景気の変動や物価上昇、通貨の変動などにより投資へ影響が及ぶリスクです。フィリピンは個人消費が主導する内需型経済で、コロナ禍を除けば近年は安定した成長を維持しており、2024年の実質GDP成長率は5%台半ばとされています。

一方で、インフレや財政赤字の動きには注意が必要です。通貨ペソは外的要因で変動しやすく、過去には世界的な金融不安で急落した例もあります。

現在は複数の格付け機関から投資適格と評価されており、経済の基盤は一定の安定性を保っています。

参考:ジェトロ(日本貿易振興機構)

法制度・契約リスク

法律の変更や契約の執行が難航するケースなども、制度的なリスクに含まれます。

フィリピンでは、外国人による土地の所有は認められておらず、一部の事業では外資の出資比率に制限が設けられています。制度への理解が不十分なまま進出を進めてしまうと、不利益を被る可能性があります。

また、司法制度では手続きに時間を要することもあり、契約をめぐる紛争が長期化する事例も見られます。契約書を公証人のもとで正式に認証するなど、フィリピン特有の実務慣習にも注意が必要です。

このようなリスクに備えるには、現地の専門家からサポートを受けるほか、将来の紛争を見越して契約に国際仲裁の条項を組み込むといった工夫も有効です。

社会・文化的リスク

社会・文化的リスクとは、治安や文化の違いから生じるリスクです。犯罪やデモ、文化的な誤解などが挙げられます。フィリピンでは都市部を中心にスリや強盗が発生している事実もあり、基本的な防犯対策が重要です。

一方で、フィリピンは親日的で、文化的な摩擦は比較的少ないとされます。英語が公用語であることもあり、ビジネス上のコミュニケーションも取りやすい環境です。

ただし、時間感覚や契約に対する考え方など、日本と異なる習慣には戸惑うこともあります。現地の慣習を尊重し、丁寧に確認を重ねる姿勢が円滑な関係づくりにつながります。

自然災害・地理的リスク

フィリピンは台風や地震などの自然災害リスクが比較的起こりやすい国とされています。2022年以降、国際的な災害リスク報告でも、フィリピンはリスクが高い国と評価されています。

沿岸部の物件では高潮や水害、地盤の弱い地域では地震のリスクがあり、不動産投資にも影響します。物件選定時はハザードマップの確認や保険の検討が重要です。現地の災害環境をしっかり確認しておく必要があります。

参考:GMA NEWS ONLINE

日本も地震や台風が頻発する災害多発国でありますが、防災インフラや復旧体制の違いによってリスク評価に差が出ている側面があります。

カントリーリスクの評価方法

カントリーリスクは、投資先の国に内在する政治・経済・社会などの不確実性を評価する指標です。

リスクの全体像を把握するために、主に「定量評価」と「定性評価」の2つの視点から分析されます。

定量評価

これらの経済・財政指標をもとに、国の経済基盤の安定性を定量的に評価します。 特に外貨準備や債務履行履歴は、対外的な信用を測る重要な要素です。

  • GDP成長率
  • インフレ率・財政収支
  • 対外債務残高・外貨準備高
  • 経常収支・デフォルトの有無

定性評価

これらの要素は数値化が難しい分野ですが、専門家による調査・判断によってリスク評価が行われます。政情不安や制度の不備は、長期的な投資に大きく影響する可能性があります。

  • 政治の安定性・治安状況
  • 政策の一貫性・透明性
  • 司法制度の信頼性
  • 腐敗の程度や制度運用の実効性

主なリスク評価の指標

指標内容
OECDカントリーリスク分類各国の支払い能力や経済状況に応じ、0〜7の8段階で評価
信用格付け各国政府の債務返済能力をアルファベットで評価

2025年2月時点で、フィリピンはOECD分類で「D」(中位水準)、信用格付けでは「BBB」と、投資適格級と評価されています。

補足:格付けやリスク分類は定期的に見直され、国債利回りや投資判断にも直接影響します。投資先の信頼性を測るうえで、重要な指標のひとつと言えるでしょう。

フィリピンのカントリーリスクの現状

世界的な格付け・評価機関による最新ランクと推移

フィリピンは現在、複数の格付け機関から「投資適格級」の評価を受けています。いずれも安定的な見通しとなっており、国際的に信用力のある国と見なされています。

格付け会社格付け見通し
S&PBBB+安定的
Moody’sBaa2安定的
FitchBBB安定的
R&I(日本)A-安定的
JCR(日本)A-安定的

フィリピンは一時ジャンク級まで格下げされた時期がありましたが、その後は各社がそろって投資適格級へと引き上げました。

※数値は参考値です。最新データは公式統計などをご確認ください。

他のASEAN諸国との比較

フィリピンのカントリーリスクは、東南アジアの中ではおおむね中位に位置しています。
シンガポールやマレーシアといった先進的な経済環境を持つ国と比べるとややリスクは高いものの、経済や政治の安定性、信用評価の面では、ベトナムやカンボジアなど一部の新興国より上位と見なされています。

国際機関や格付け会社の評価では、フィリピンはタイやインドネシアと同じグループに分類されることが多く、いずれも投資適格とされる水準にあります。また、腐敗認識や制度の信頼性といったソフト面においても、極端に低い評価ではなく、一定の健全性が認められています。

ただし、シンガポールのような極めて低リスクな国と比べると、政治や制度に関する課題は残っており、投資判断には慎重な見極めが必要です。期待されるリターンとリスクのバランスをしっかり評価する姿勢が求められます。

フィリピンの地域別に見るカントリーリスク

同じフィリピン国内でも、地域によってリスクの様相は異なります。都市部と地方、また島ごとに治安や経済発展の状況に差があるため、投資先や移住先を検討する際には、それぞれの地域特性を把握しておくことが重要です。

ここでは、日本人にも馴染みのマニラ首都圏、セブ、ダバオ市を取り上げ、地域ごとのリスクについて見ていきます。

マニラ首都圏

マニラ首都圏(メトロマニラ)は、政治・経済の中心地として利便性が高く、多くの企業が集まる活気ある都市です。全国GDPの3割超を占める成長エリアで、不動産市場も活発です。その一方で、大都市ならではの注意点もあります。

治安は比較的安定しており、外務省も「十分注意(レベル1)」としていますが、スリやタクシー強盗には注意が必要です。夜間の外出やスラム街への立ち入りは避けましょう。

交通渋滞や洪水といった課題はあるものの、対策も進められており、都市としての魅力は十分です。安心して暮らすには、防犯性の高い住まいや信頼できる交通手段の確保がポイントです。

セブ

セブシティ

セブはリゾート地としても知られ、フィリピンの中では治安が比較的良好で、暮らしやすい都市とされています。観光客や外国人居住者も多く、警察も一定の保護体制を整えており、外務省も「十分注意(レベル1)」にとどめています。

ただし、日本と比べれば軽犯罪には注意が必要です。スリや置き引きが発生しており、夜間や人気の少ない場所では慎重な行動が求められます。近隣州では政治的事件もあり、報道や現地情報に目を配っておくと安心です。

経済面では、セブは観光とBPO(コールセンターなど)を中心に発展し、近年はIT産業の育成も進んでいます。パンデミック時の観光依存を教訓に、産業の多様化が図られています。

交通や電力などインフラ面に課題はあるものの、日本人の駐在者や移住者も多く、外国人にとって比較的適応しやすい地域といえるでしょう。

ダバオ市

ミンダナオ島最大の都市ダバオ市は、治安の良さと成長ポテンシャルを併せ持つ地域として注目されています。特に市内では犯罪抑制策が徹底され、公共空間のルールも厳格に管理されていることから、外国人にも安全な都市と評価されています。

ただし、この安全性はあくまで市内が中心で、郊外では治安が不安定な地域もあります。移動の際は最新情報を確認し、信頼できる交通手段を選ぶことが重要です。

経済面では農業とサービス業が中心ですが、近年はインフラ整備や外資の進出も進み、今後の発展が期待されています。一方、人材や物流面では課題もあり、ビジネス展開には準備が欠かせません。

ダバオは「治安に優れ、将来性がある一方で、まだ成長途上にある都市」として、今後の動向に注目したい地域です。

カントリーリスクの対策

フィリピンでの投資や移住を検討するうえで、カントリーリスクへの備えは欠かせません。ここでは、特に重要な「治安」「経済・為替」「法制度・契約」のリスク対策について、基本的なポイントを紹介します。

治安リスクへの対策

治安リスクへの備えとしては、まず外務省など信頼できる情報源から最新の安全情報を確認することが基本です。ミンダナオ西部など、危険度の高い地域には近づかないようにしましょう。

都市部では、スリや強盗などの日常的な犯罪に備えた行動が大切です。夜間の一人歩きを避け、配車アプリを使う、バッグを体の前に持つなど、基本的な防犯対策を徹底しましょう。安全性の高いエリアの住居を選ぶことや、海外旅行保険に加入することも有効です。

現地では日本人コミュニティとの情報共有も役立ちます。「日本と比べるとややリスクがある」という心構えが、リスク回避につながります。

経済・為替リスクへの備え

経済や為替の変動に備えるには、継続的な情報収集と適切なリスク分散が基本です。インフレや金利、政府の政策変更など、経済指標の動きには日頃から目を向けておきましょう。

為替リスクには、企業なら為替予約、個人なら通貨の分散や損切り設定などが有効です。過度に心配する必要はありませんが、想定外の変動に備える姿勢は大切です。

また、資産をフィリピン国内に集中させず、他国資産や円建て資産と組み合わせることで、全体のリスクを抑えることができます。保険会社やNEXIの海外投資保険を活用するのも一つの方法です。

万が一に備えて手元資金に余裕を持たせておくことが、長期的に安心して投資を続ける鍵となります。

法制度・契約リスクの回避策

フィリピンでのビジネスや投資では、契約や法制度の違いによるリスクを防ぐことが重要です。会社設立や契約の段階から、現地の弁護士や専門家のサポートを受けましょう。

契約書は英語が基本ですが、日本語訳を用意して内容を正しく理解することも大切です。公証を受けておけば、後のトラブル防止にもつながります。

不動産投資では、登記情報や所有権を確認し、信頼できる不動産会社を通じた取引が安心です。

法律や制度は変化するため、JETROなどの情報源を活用し、柔軟に対応することがリスク回避に役立ちます。

フィリピンでの投資物件選びに失敗したくない方は、現地の情報を集め、信頼できる不動産業者を見つけることが重要です。弊社ではツアーや個別面談なども行っていますので、お気軽にLINEにてお問い合わせください。

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カントリーリスクが低い時期・高まる時期の見極め方

投資のタイミングを考えるうえで、リスクの変動要因を知っておくことは大切です。フィリピンでは、大統領選や政権交代の前後に方針が見えにくくなり、市場が一時的に不安定になることがあります。ただし、方向性が固まれば、投資の流れが戻るケースも少なくありません。

また、世界的な景気後退や金融不安が広がると、新興国から資金が流出しやすく、通貨や株価が下がることもあります。逆に、金利が下がったり資金が潤沢なときには、市場が落ち着く傾向があります。

無理を避けつつ、チャンスを見極める姿勢が、安定した投資につながります。

フィリピンのカントリーリスクから見る将来性

フィリピンは新興国として一定のリスクを伴いますが、近年の政治安定や経済成長により、リスクとリターンのバランスは改善しています。

世界的な信用評価でも投資適格級を維持しており、ASEAN諸国の中では中位のリスク水準に位置づけられる国です。海外不動産投資の対象としても、十分に検討に値するといえるでしょう。

1億人を超える人口と平均年齢26歳の若さ、労働力、成長力は、フィリピンならではの魅力です。リスクを適切に管理すれば、大きなチャンスに繋がるでしょう。

まとめ

フィリピンのカントリーリスクは、中長期的には安定化が進んでおり、投資適格国として評価されています。政治・経済ともに成長基調にあり、過度な不安を抱く必要はないでしょう。

ただし、治安や自然災害、法制度の違いなど、日本とは異なる特有のリスクは存在します。地域によってリスクの性質も異なるため、現地事情を把握し、適切な対策を講じることが重要です。フィリピンの可能性とリスクを正しく理解したうえで、自分に合った投資戦略を考えてみてはいかがでしょうか。

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